大判例

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東京高等裁判所 昭和26年(ネ)1240号 判決

(一) 本件賃貸借が仮りに一時使用のためのものであれば、当審証人山本実の証言によつて認められるように、本件宅地上に被控訴人が当時としてはバラックとは認められない程度に相当立派なトタン板葺、壁は板張りの建物を築造する筈はなく、又当審証人小山兼吉、水越誠一の各証言によつて認められるように、訴外水越誠一がその所有地を百坪宛に分割して地上権を売ることとし、昭和二十三年被控訴人とは従来の関係もあるので地上権の買受方を申し込んだのであるが、若し本件宅地の賃貸借が区劃整理実施までという極めて短期間で且つ不安定なものであるならば、水菓子屋を営もうとする被控訴人は喜んで右申込を承諾した筈であるが、被控訴人は本件宅地を既に賃借したことを理由にして折角の申込を拒絶したのである。(二)若し仮りに本件賃貸借が一時使用のためのものであるならば、被控訴人が謝金名義の下に実質上は権利金ともいうべき金千二百円の金額(賃料が一坪につき一ケ月金一円二十銭の当時において、坪当り金五十円の金額は約三年半分の賃料に相当するのであつて、昭和二十一年八月当時の一般物価指数を考慮するときは決して軽少の金額ではなく、当時の借地事情から見れば権利金としては相当の金額といわねばなるまい。)を交付する筈はなく、この金額を本件宅地の一時使用の謝礼として交付することは到底首肯することができない。(三)前顕甲第三号証、原審証人日置寛、当審証人川名秀次郎の各証言、原審及び当審における被控訴人の尋問の結果によれば、控訴人と被控訴人とは協力して昭和二十一年十月三十一日東京都長官に対して本件借地の権利申告書を提出したのであるが、右申告書に借地の実坪数は二十四坪であるにかかわらず三十一坪五合と記載したのは、三十坪以上の借地人でなければ区劃整理による換地が貰えなかつた事情に基くことが認められるのであつて、若し本件賃貸借が区劃整理の実施される迄の期間のものであるならば、このような権利申告書を提出する余地も亦必要も全く存しなかつた筈である。(四)当審証人川名秀次郎の証言並びに原審及び当審における被控訴人の尋問の結果によれば、右権利申告書中の借地期間は空欄のままにして、その提出を控訴人の母に依頼したところ、その後何人かによつて借地期間として三ケ年の記載がなされたのであることが認められるのであつて、右申告書に借地期間三ケ年の記載のあることによつて、本件賃貸借が区劃整理の実施までを期限とする一時使用のためのものであることを認定するに足る資料とすることはできない。(五)原審証人山本清太郎の証言によつて原本の存在とその成立とを認めることのできる乙第二号証、原審における証人小沢つや、日置寛、山本清太郎の各証言及び被告(被控訴人)の尋問の結果並びに当審における証人武蔵野菊蔵、北島マスの各証言(但し北島マスの供述中後記措信しない部分を除く)及び被控訴人の尋問の結果によれば、甲第四号証は控訴人名義の東京都知事宛の権利取消申告書であるが、右申告書は昭和二十四年十二月頃訴外武蔵野菊蔵が控訴人の母北島マスの依頼によつて作成したものであり、その頃マスは被控訴人方を訪れ被控訴人の妻つやに対し新しく浴場の建築許可を申請するについて被控訴人の換地上に一尺五寸位かかるので許可の必要上捺印して貰いたいと告げて借地権者である被控訴人の記名の下に捺印を求めたので、深く事情を知らない右つやはマスの言うままに捺印してこれを交付し、マスはこれを東京都に提出したことが認められるのであつて(この認定に反する証人北島マスの証言は措信することができない)、若し本件賃貸借が一時使用のためのものであつて、区劃整理の実施によつて満了するものであれば、マスがこのような申告書を提出する必要は毫末も存しなかつたといわねばなるまい。果して然らば、本件宅地の賃貸借が一時使用のためのものであることを前提とする控訴人の本訴請求は既にこの点において失当であつて、これを棄却した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がない。

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